doi_iku’s blog

LINEブログから引っ越しました。

東京では「思いやりが日常の詩」

歴史のことば劇場45この夏、マスコミが五輪批判を繰り返すなかで、外国人記者らが東京を絶賛する報道が目につきました。彼らの述べた、東京の「多様性」「思いやり」「個人に優しい」との表現は、近時というより、過去からつづく東京のイメージのように思え…

自然の進化と社会の進化

歴史のことば劇場44 先日「生活保護の人を助けるより、猫を助けたい」などとネット上で発言をした有名人が、きびしい批判を浴び、後日涙ながらに謝罪したと報道されました。弱者切り捨て、強者の論理、市場原理との批判もあったようですが、進化論の元祖・ダ…

自由と権利をもたらす二つの思想

歴史のことば劇場43 以前、コロナ感染の急拡大から一時「ロックダウン」云々の議論が現れましたが、あまり進展せず、重症者以外、自宅療養との方針が出た際も、日本の医療が大病院や公立中心でなく、中小経営や個人病院が支えている実態などが指摘されました…

地獄と救済の平等性

歴史のことば劇場42 かつて誰もが信じていた地獄や天国は、近代科学の進展と共に消え去りましたが、わが国の歴史上、「地獄」の場景が現されたのは『日本霊異記』(平安初期)からと言われます。同書では、鳥の卵を獲ることを業(なりわい)とする罪深い男が、…

天下思想と神国論の効用

歴史のことば劇場415世紀後半、雄略天皇は「治天下大王」という表記(江田船山古墳出土太刀銘、稲荷山古墳出土鉄剣銘)によって歴史に登場しますが、この「天下」とは、漢語本来の意味では「全世界」や「宇宙」のことを意味します。たとえば、近世の信長や秀…

「歴史を無視する立法」は精神を滅ぼす

歴史のことば劇場40江戸時代の結婚といえば「何事も親の言う通り…」と思いがちですが、じつは「予め同意を求める」のが「普通の順序」だったそうで、これは中田薫(法制史家、1877~1967)『徳川時代の文学に見えたる私法』に見えており、天保年間の「仇競今…

憲法慣習としての男系継承

歴史のことば劇場39 前回、近年の一般的な憲法概説書(渋谷秀樹『憲法 第3版』有斐閣)に依拠して、皇位の男系継承は、現憲法の「当然の前提」であり、「千数百年を経ての憲法慣習」「実質的な憲法」である、この問題に関する皇室典範の改正は、国会の議決…

女系容認には憲法改正か国民投票が必要との説

歴史のことば劇場38先日、安定的な皇位継承を議論する有識者会議の初会合が首相官邸で開かれ、女性宮家などが論点となると報道されましたが、しかし、近年の一般的な憲法概説書(渋谷秀樹『憲法 第3版』有斐閣、平成29)は、この問題に関する「皇室典範の改…

世界地図をぬり変える理念と構想

歴史のことば劇場37先日、核兵器禁止条約が発効しましたが、米国などの核保有国や「核の傘」の下にある日本などは批准せず、また、その条約の不参加に対しても、目立った批判は出ませんでした。コロナの影響もあるとはいえ、いわゆる「核の抑止機能」の持つ…

歴史的な≪信条≫が自由をもたらす

歴史のことば劇場36 香港国家安全維持法は、いわゆる「域外適用」、中国本土ばかりか当地に居住しない日本人や全世界の外国人にも刑罰が科されるそうで、中国共産党は「宇宙を支配する」つもりか(高橋洋一)とも揶揄されています。また同法では、禁固や終身…

「物づくし」と自然の効用

歴史のことば劇場35「春は あけぼの。やうやう白くなりゆく…」『枕草子』の名高い書き出しですが、これは助詞ハのもたらす効果を利用した手法です。つまり「春は…」のハは、いわゆる主格の助詞ではなく、題目提示の助詞ハであり、「春は(何がいいかというと…

みことのりと王朝儀礼

歴史のことば劇場34 先日行われた立皇嗣の礼は、勅使発遣に始まり、立皇嗣宣明の儀と壺切御剣の親授が儀礼のクライマックスであったように、皇嗣は天皇陛下のお言葉にしたがって正式に誕生するという次第となっていました。こうした「宣明」という内外への宣…

中国批判の歴史的な起源について

歴史のことば劇場33日本の皇室が世界から驚きのまなざしを向けられるようになるのは、十世紀の頃までさかのぼります。『宋史』日本伝によれば、宋に渡った東大寺の僧奝然(ちょうねん)は、第二代皇帝太宗(たいそう)に謁見し(984)、日本の律令や王年代記、考…

自由と平和の「歴史認識」

歴史のことば劇場32 日本国憲法第九条の起源とされる不戦条約(1928)は、徹底した戦争放棄までは要求しておらず、国の交戦権や自衛権を自明の前提としていました。また九条第一項が「国権の発動たる戦争」や「武力」のすべてを放棄するのでなく、わざわざ「…

「包みの文化」の贈与論

歴史のことば劇場31🔻風呂敷包みと「魂の贈与」 レジ袋の有料化で“風呂敷エコバッグ”が注目されているそうですが、風呂敷は、手軽で古風なエコというばかりでなく、本来は、着物や帯の色柄と調和し、服装を引き立たせる役割もあり、意外に現代人のセンスに、風…

世論は自由の伝統に守られる

(※前回の改稿です) 昨今の国家安全維持法の成立で「香港の自由は死ぬ」そうですが、不思議なのは、かつてアヘン戦争に敗れて植民地となった香港に、なぜ「自由」があったのでしょうか。それは思うに、1843年、香港の初代総督に就任したアイルランド人のハリ…

戦後の基点にある「古来の自由」

歴史のことば劇場30 国家安全維持法の制定で「香港の自由は死ぬ」と言われますが、アヘン戦争で植民地となった香港になぜ「自由」があるのかと考えると、香港には初代総督H・ポッティンジャー卿以来、関税を拒否する自由貿易の方針がありました。また政策的…

壁の文化と床の文化

歴史のことば劇場29 新型コロナウィルスによる死亡率が、アジア諸国や日本はきわめて低率で、なかでも日本は、ロックダウン(都市封鎖)も行わず、外出制限に罰則もない「非常にゆるい対策」で感染を防止したといわれます。西欧の都市は、通常、石造や煉瓦造…

「マサシキ御ユヅリ」の男系継承

歴史のことば劇場28「古来の常識」にもとづく男系継承 ネット上の女性週刊誌の記事を見ていると、世論調査では、皇位の女系継承への賛成が合計85%にも達しているのに、いぜん男系継承にこだわり、皇室典範改正の議論を進めない安倍政権は、皇室を「存続の危…

コロナによる「死」と日本人の霊魂

歴史のことば劇場27🔻死の尊厳と霊魂 先日、志村けん氏が入院先で新型コロナウィルスによる肺炎で亡くなった際、親族の誰ひとり臨終を看取れず、火葬なども防護服の職員が行ったとされ、遺骨だけが渡されたとの報道がありました。やむを得ない処置とはいえ、現…

人種偏見に負けない「人の心の勝利」

歴史のことば劇場26 ◎差別・偏見に抗する「人の心の勝利」 以前、アジア人を「コロナ」呼ばわりする差別や偏見が話題になりましたが、パンデミックの中心地はすでに欧米の側に移ったそうです。情報社会では人々の考え方は急速に変化しますが、かつて数百年に…

自由・平等は「古来の権利」にもとづく

歴史のことば劇場25自由・平等は、歴史伝統にもとづくお雇い外国人グリフィスは、著書『ミカド』において、幕末の松平春嶽と横井小楠の関係を、米国初代大統領ワシントンと副官ハミルトンの関係になぞらえ、小楠が京都の新政府の会議で、信教の自由のみなら…

「Aといふ男」の話~象徴伝統継承説について~

尾張徳川家の第21代当主で、 徳川美術館・館長だった徳川義宣(1933~2005)には、 幼稚園以来の旧友で、生物学や歴史に詳しい「Aといふ男」がいました。 Aは、美術史の某先生から中国絵画の個人講義を受けていたが、 あるとき、南宋の毛松筆の重要文化財…

歌会始の「歌徳」と国民統合

歴史のことば劇場23歌会始にみる「歌徳」の伝統「歌会始と講書始(※ご進講)は極めて大事」(上皇陛下)とされますが、一般的に歌会始は、室町後期の歌御会始(うたごかいはじめ)(1503)から定着し、現在のような、貴人以外の一般人による詠進(えいしん)は、…

「象徴」と立憲主義㊦

歴史のことば劇場㉒「象徴」と立憲主義(下)GHQによる憲法の「象徴」条文の起草者は、ウォルター・バジョットの『英国憲政論』を参照し、当時、世界の古典版にあったバルフォアによる巻頭解説には、「わが国王は、その皇統と職務により、わが国民の歴史…

「象徴」と立憲主義㊤

歴史のことば劇場㉑「象徴」と立憲主義(上) 天皇陛下が、即位の礼において、上皇陛下が「その御心を御自身のお姿でお示しになってきたことに改めて深く思いを致し…国民に寄り添いながら、憲法にのっとり…象徴としてのつとめを果たすことを誓います」と述べ…

八月革命説を超えるもの

歴史のことば劇場⑳▼八月革命説が通説でなくなる日 「即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」(平成28年8月8日「象徴としてのお勤めについてのおことば」)こう…

世界遺産・前方後円墳と三種の神器

歴史のことば劇場⑲ 世界遺産・前方後円墳と三種の神器 世界文化遺産に登録された百舌鳥・古市古墳群の仁徳天皇陵(大阪府堺市)は、世界の巨大建造物の中でも最大級の規模を誇り、総工期は15年8カ月、延べ680万超の人員を要したと推計されています(大林組…

「あまちゃん」ならぬ「海女さん」に歴史あり

▼「地元」と出会って、自分を取り戻す 平成25年度、NHKの朝ドラ「あまちゃん」は、最高視聴率が27%を超えていたそうで、最近でも「朝ドラに革命おこしたヒロイン」の1位に選ばれていました。たしかに、主人公の天野アキ(主演・能年玲奈)は、一風変わった…

男系継承と法の支配、自生的秩序

歴史のことば劇場⑱ ▼男系継承は、法の支配と自生的秩序の典型例 君主は伝統を守る存在であり、政治は歴史を教師とすべき言われますが、古代の律令法には、皇位継承に関する規定は存在しません。 その理由の一つに、「非常の断(だん)、人主(しゅ)これを専(も…