歴史のことば劇場38
女性宮家などが論点となると報道されましたが、
この問題に関する「皇室典範の改正は、国会の議決で可能とはいえない」と述べています。
なぜなら、天皇の地位は、
旧憲法以前からの歴史的な継続性が認められ(地位継続説)、
現憲法による過去との断絶を強調する説(地位断絶説)もあるが、
もっとも、天皇の地位は、主権の存する国民の総意に基く(1条)から、
また同書は、男系男子を現憲法の「当然の前提」とし、
天皇の地位の継続性として「譲位の道」を合憲と認めています。
しかし女帝は、周知の通り譲位を含め十代を数え、
また神皇正統記のいう「マサシキ御ユヅリ」は父子継承の優位をさすので、
「千数百年を経ての憲法慣習」と言うなら、男系の女帝は含まれるように見えます。
「国民と苦楽を共にする」との伝統を、上述の継続説のうえに、付加されました。
いわば伝統と現憲法を相反するものではなく、相通ずるものと位置づけました。
その一方で、
小泉政権の有識者会議(平成17)で、女系容認を打ち出した憲法学の横田耕一氏は「断絶」論者でした。
横田氏いわく「『断絶説』を採る私には伝統というのは、合理的理由とは認められません。/したがって、女性天皇や女系天皇の否認は違憲と考えております。」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/dai6/6siryou4.html
ちなみに同氏は
「仮に女性天皇や女系天皇を認めたといたしましても、世襲制度そのものが平等原則からの逸脱であることは言うまでもございません。」とある通り、
皇室自体が人間の平等原則や人権に反すると考える反天皇論者です。
現憲法と伝統との繋がりなど全く考慮していないように見え、これらは、いわゆる女系容認論が、
いかなる論理や経緯から出現したのか、その出自を明らかに示しています。そればかりか、
彼らの依拠する「断絶」説は、学問的にも、現実の運用上も、成立しません。
にもかかわらず、それを誰も指摘せず(吉川座長「学説には立ち入らない」)、
国会や有識者会議などによる、改憲を伴わない天皇の地位に関する変更は「権力の濫用、逸脱」であり、
長期的な「自由と安定」(バーク)という「国民の世襲的権利」をも同時に毀損する「権力の濫用、逸脱」であることをも忘れています。