doi_iku’s blog

LINEブログから引っ越しました。

2022-01-01から1年間の記事一覧

「資本主義文明」と日本の評価

歴史のことば劇場58すぐれた人たちの考え方は、鋭く将来を見通すばかりでなく、立場や職業の違いを超えて似ていることもありますが、第二次大戦中、経済学者J.シュンペーターは、米国の政策はスターリンの術中にはまっている、と日記に書きました(トーマス …

敗れざるリーダーの呼びかけ

歴史のことば劇場57ドゴールのよびかけ先日、国連総会で岸田首相は安保理改革を訴えましたが、第二次大戦中、ドイツに敗れ、占領されたフランスは、もしドゴールが亡命先のロンドンから徹底抗戦を叫ばなければ、戦後、戦勝国となれず、常任理事国にも列せら…

“核持ち込み”と現代思想

歴史のことば劇場56 近時、ロシアの専横で核軍縮の国際交渉が頓挫したそうですが、戦後日本の沖縄返還と「核」との間に深い関係があったことは有名です。昭和39年12月、佐藤栄作首相はライシャワー駐日大使と会談し、同10月に核実験を行った中国に対抗して「…

9条の改正と歴史認識

歴史のことば劇場55 ウクライナ紛争の影響なのか、 最近の世論調査では憲法9条の改正賛成が、反対を上回っていますが、 しかし9条は、戦後の絶対平和の思想には由来しません。むしろ1928年の不戦条約にその淵源を持っており、 九条第一項が「国権の発動たる…

象徴の「現代的」な本義

歴史のことば劇場54先日、エリザベス女王在位70周年に関する報道がありましたが、現憲法の象徴天皇制が、英国の立憲君主制をふまえて成立したことはよく知られています。GHQ民政局がマッカーサーに帝国憲法の改憲案を提出した際の説明(昭和21/2/21)によれ…

「自由の勝利」へ向けたcommitment

歴史のことば劇場53 台湾有事に「関与する」、「(それが)アメリカのcommitment〈※公約、責任〉だ」―先日の日米共同会見におけるバイデン大統領の発言ですが、ウクライナ危機に米国やNATOは直接に関与できず、ロシアの侵攻を止められなかった。しかし、台湾…

二つの戦争論とその帰結

歴史のことば劇場52「歴史的な円安、インフレ水準」―近時よく語られる言葉ですが、第一次大戦後のJ.M.ケインズ『平和の経済的帰結』(1919)によれば、「レーニンは、資本主義を崩壊させる最善の方法は通貨価値を下落させることと断言した」といいます。「イ…

自由主義陣営に生きる「不動の決意」

歴史のことば劇場51ロシアによるウクライナ侵攻が世界を震撼させていますが、1943年末、カイロ会談でルーズベルト大統領は、蒋介石に対し、中国は沖縄に関して権利を主張するつもりはないかと一度ならず質問した。これに対して蒋は、米中共同で琉球諸島を軍…

「声なき奴隷」の言葉を排す

歴史のことば劇場50 「平和維持」「特別軍事作戦」「非ナチ化」―― ウクライナ侵攻をロシア側はこう呼び、中国はそのロシアの行動を「理解する」と述べました。 かつて「ニュースピーク」とG・オーウェルが呼んだ、典型的なプロパガンダが、 いぜんとして全体…

「テキストの身体化」が高度な独創を生む

歴史のことば劇場49江戸時代の教育は「素読(そどく)」を基礎としますが、素読は単なる音読とは異なります。師匠が『孝経』や『大学』の一字一句を「字突(じつき)」で指しながら訓読し、それを子弟が復唱する「付読(つけよみ)」が短時間で行われ、家に帰って…

国土・国境の尊厳

歴史のことば劇場48古来、日本の国境は必ずしも明確でないとされ、平安時代の追儺(ついな)(※疫鬼を域外へ払う儀礼)祭文には「東方陸奥、西方遠値嘉(五島列島)、南方土佐、北方佐渡」を「四方之堺(ほとり)」とあります。中世では、東は外ヶ浜(青森県海岸…

安定と価値観の時代へ

歴史のことば劇場47 近時、インフレや石油高騰の懸念が報じられますが、1970年代の石油危機やインフレについて、香西泰『高度経済成長の時代』(昭和56)などのスタンダードな著作に従えば、昭和48年秋、日本経済は既に年率2割の物価上昇にあり、そこに石油…