doi_iku’s blog

LINEブログから引っ越しました。

政治とは「永遠の存在を求める」行為

歴史のことば劇場74 いまだに裏金やら党紀委員会やらの話題が世間を騒がせていますが、 こんな報道ばかりでは立派な議論も陳腐な議論も区別つきません。「裏金脱税」のイメージが強調され、いったい誰がどの政策にどう貢献したか、あるいは反対したかなどの…

自由主義は「共通の利益」「共通善」をめざす

歴史のことば劇場73 ウクライナやガザ地区での戦闘はいぜん終わりが見えず、妥協の余地も見いだせないようですが、通常、外交では、 敵を壊滅させるよりも妥協する方が利益があり、「利害の対立」と同時に「利害の一致」が存在する(H・ニコルソン)といわれ…

「核」「冷戦」の時代と古典外交への回帰

歴史のことば劇場72 ウクライナやガザ地区では激しい戦闘が続いていますが、核兵器はいぜん使われていません。かつて「ソ連封じ込め」を提唱したG・ケナンは、世界大戦や総力戦は「核の出現」によって終焉すると述べました。 ケナンによれば、南北戦争、米西…

忘れられた「初心忘るべからず」の真意

歴史のことば劇場71 「初心忘るべからず」― この世阿弥の有名な教訓のほど、誤解されている言葉もないようです。 それは「けっして初心のまじめな情熱や覚悟を忘れるなという道徳的な教えではない。むしろ初心の藝がいかに醜悪であったか、その古い記憶を現…

日本的な「自由」の歴史的な由来

歴史のことば劇場70 “日本人は水と安全はタダだと思っている” とは、イザヤ・ベンダサン(山本七平)『日本人とユダヤ人』(1970)の有名な文句ですが、 同書は「日本人は常に自由であった」から「水と安全は無料と思っている」と述べています。 いわく、ユダ…

「文明」としての源氏物語

歴史のことば劇場69 一九二・三〇年代、A・ウェイリーによって源氏物語が英訳され、当時の西欧の文学好きは、同時期に英訳されたプルースト『失われた時を求めて』とともに源氏を愛読したそうです。 彼らにとって、源氏を読むことはプルーストを読むのと同じ…

「日本的心情」の驚くべき効用

歴史のことば劇場68 「日本的心情」の驚くべき効用 『ライシャワー自伝』(徳岡孝夫訳、1987)によれば、1962年2月、駐日大使としてロバート・ケネディ司法長官の訪日に関った際、 「ロバートに請うて15分間を二人だけで過ごし…沖縄の自治と将来の返還を早め…

自由世界の「普遍的な結束」とは

歴史のことば劇場67 自由世界の「普遍的な結束」 「頭を金髪に染めても、鼻を高くしても(我々アジア人は)決して西洋人になれない」 先日、中国外交のトップが人種差別的な発言をして物議を醸したそうですが、 起源的に日米同盟は1946年6月末、米国国務省政…

高度成長は「自然発生的な協力」の成果

歴史のことば劇場66 報道によれば、ウクライナの復興へ向けた議論が早くも始まり、日本にも期待が寄せられているそうです。 先の大戦の敗戦により、日本経済の受けた損害は甚大でしたが、しかし残存する資本ストックは意外にも大きく、特に重化学工業設備は…

自由世界の「精神に明記された」相互主義

歴史のことば劇場65 自由世界の「精神に明記された」相互主義 G7広島サミットやグローバルサウスとの会合は成功裡に終ったようですが、中国は日本を「西側の少数国と結託して内政干渉を行う」などと批判しました。 いぜん自由世界の国際秩序を受け入れず、…

民主主義は偉人を創り出す

先日、在外中国人の言動を取り締まる「中国秘密警察」の拠点が日本にも二か所あり、彼らを抑圧していると報じられました。中国政府は当事国の主権を無視して言論を封殺し、共産党批判など存在しないかのように装っているようです。 かつてケインズは、株式投…

歴史と自由の命運

歴史のことば劇場63 インドが中国を抜いて人口世界一となり、さらなる経済成長が予想されますが、 かつて経済学者フリードマン夫妻は、19世紀の明治日本と20世紀のインドでは「自由市場」の思想を選ぶのか「計画経済」の思想を選ぶかで、明暗が分かれたとの…

武士道より愛された『武士の娘』

歴史のことば劇場62 武士道を世界に紹介した著作は、新渡戸稲造の本が有名ですが、 より幅広い層に愛されたと思われる本に、杉本鉞子『武士の娘』があります。米国で1925年に刊行されて評判となり、ルース・ベネディクト『菊と刀』(1946)にも何度も引用さ…

現代の「戦争と平和」

歴史のことば劇場61 昨年9月、ショルツ独首相は国連総会で、ロシアのウクライナ侵攻について「帝国主義以外の言葉は見つからない。帝国主義や植民地主義とは対極にある世界平和への災いだ」と批判したと報じられました。マルクス主義の影響がいぜん残る歴史…

「魂なき機械」の言葉を排す

歴史のことば劇場60 岸田首相の防衛費への増税方針に対して「あまりに唐突」「拙劣」等々の批判が各界から噴出し、 なかには「景気回復に水を差す」「日本の財政規模を超える」「米国が喜ぶだけ」とか、 中・露・朝の露骨な軍事的脅威に対峙する自由世界の国…

歌会始と国民統合

歴史のことば劇場59 歌会始は、室町後期、後柏原天皇の歌御会始(うたごかいはじめ、1503)から定着し、現在のような貴人以外の一般からの詠進(えいしん)は、明治7年(1874)に始まったとされます。このため、今の歌会始は、明治になって「創られた伝統」で…

「資本主義文明」と日本の評価

歴史のことば劇場58すぐれた人たちの考え方は、鋭く将来を見通すばかりでなく、立場や職業の違いを超えて似ていることもありますが、第二次大戦中、経済学者J.シュンペーターは、米国の政策はスターリンの術中にはまっている、と日記に書きました(トーマス …

敗れざるリーダーの呼びかけ

歴史のことば劇場57ドゴールのよびかけ先日、国連総会で岸田首相は安保理改革を訴えましたが、第二次大戦中、ドイツに敗れ、占領されたフランスは、もしドゴールが亡命先のロンドンから徹底抗戦を叫ばなければ、戦後、戦勝国となれず、常任理事国にも列せら…

“核持ち込み”と現代思想

歴史のことば劇場56 近時、ロシアの専横で核軍縮の国際交渉が頓挫したそうですが、戦後日本の沖縄返還と「核」との間に深い関係があったことは有名です。昭和39年12月、佐藤栄作首相はライシャワー駐日大使と会談し、同10月に核実験を行った中国に対抗して「…

9条の改正と歴史認識

歴史のことば劇場55 ウクライナ紛争の影響なのか、 最近の世論調査では憲法9条の改正賛成が、反対を上回っていますが、 しかし9条は、戦後の絶対平和の思想には由来しません。むしろ1928年の不戦条約にその淵源を持っており、 九条第一項が「国権の発動たる…

象徴の「現代的」な本義

歴史のことば劇場54先日、エリザベス女王在位70周年に関する報道がありましたが、現憲法の象徴天皇制が、英国の立憲君主制をふまえて成立したことはよく知られています。GHQ民政局がマッカーサーに帝国憲法の改憲案を提出した際の説明(昭和21/2/21)によれ…

「自由の勝利」へ向けたcommitment

歴史のことば劇場53 台湾有事に「関与する」、「(それが)アメリカのcommitment〈※公約、責任〉だ」―先日の日米共同会見におけるバイデン大統領の発言ですが、ウクライナ危機に米国やNATOは直接に関与できず、ロシアの侵攻を止められなかった。しかし、台湾…

二つの戦争論とその帰結

歴史のことば劇場52「歴史的な円安、インフレ水準」―近時よく語られる言葉ですが、第一次大戦後のJ.M.ケインズ『平和の経済的帰結』(1919)によれば、「レーニンは、資本主義を崩壊させる最善の方法は通貨価値を下落させることと断言した」といいます。「イ…

自由主義陣営に生きる「不動の決意」

歴史のことば劇場51ロシアによるウクライナ侵攻が世界を震撼させていますが、1943年末、カイロ会談でルーズベルト大統領は、蒋介石に対し、中国は沖縄に関して権利を主張するつもりはないかと一度ならず質問した。これに対して蒋は、米中共同で琉球諸島を軍…

「声なき奴隷」の言葉を排す

歴史のことば劇場50 「平和維持」「特別軍事作戦」「非ナチ化」―― ウクライナ侵攻をロシア側はこう呼び、中国はそのロシアの行動を「理解する」と述べました。 かつて「ニュースピーク」とG・オーウェルが呼んだ、典型的なプロパガンダが、 いぜんとして全体…

「テキストの身体化」が高度な独創を生む

歴史のことば劇場49江戸時代の教育は「素読(そどく)」を基礎としますが、素読は単なる音読とは異なります。師匠が『孝経』や『大学』の一字一句を「字突(じつき)」で指しながら訓読し、それを子弟が復唱する「付読(つけよみ)」が短時間で行われ、家に帰って…

国土・国境の尊厳

歴史のことば劇場48古来、日本の国境は必ずしも明確でないとされ、平安時代の追儺(ついな)(※疫鬼を域外へ払う儀礼)祭文には「東方陸奥、西方遠値嘉(五島列島)、南方土佐、北方佐渡」を「四方之堺(ほとり)」とあります。中世では、東は外ヶ浜(青森県海岸…

安定と価値観の時代へ

歴史のことば劇場47 近時、インフレや石油高騰の懸念が報じられますが、1970年代の石油危機やインフレについて、香西泰『高度経済成長の時代』(昭和56)などのスタンダードな著作に従えば、昭和48年秋、日本経済は既に年率2割の物価上昇にあり、そこに石油…

農業という伝統産業

歴史のことば劇場46 日本の歴史は、ある意味、お米の生産の生産の歴史であり、江戸期から現代まで、全体的に稲作生産は上昇しますが、最大の画期は、戦後の高度経済成長期まで時代が降ります。また生産性が、高度成長期までほぼ同一水準の地域が多くあり、作…

東京では「思いやりが日常の詩」

歴史のことば劇場45この夏、マスコミが五輪批判を繰り返すなかで、外国人記者らが東京を絶賛する報道が目につきました。彼らの述べた、東京の「多様性」「思いやり」「個人に優しい」との表現は、近時というより、過去からつづく東京のイメージのように思え…