朝日新聞3月29日付に
三谷太一郎氏(東大名誉教授、元宮内庁参与)のインタビュー記事がありました。
それによると、
2010年7月の参与会議で
天皇が退位について話されたそうで、
「非常に大きな衝撃……憲法が直面した最大の問題と考えた」。
また「政治家も学者もまったく予想しなかった」
その後、「保守派もリベラルも否定的」だった
とも。
そして、
憲法の「国民の総意」を持ち出し、国民の総意とは「ルソーの一般意思に近い」とか。
しかしながら、
「総意」を持ち出すのは奇妙でしょう。
「大きな衝撃」とか「政治家も学者もまったく予想しなかった」
「保守派もリベラルも否定的」なのに、
なんで「国民の総意」で説明ができるのか?
誰も予想しないことが、
どうして「国民の総意」になるのか❔
しかも
ルソーの一般意思って、
著名な憲法学者の清宮四郎も
一般意思説に否定的だったのは周知の話なのに、
いくらインタビュー記事とはいえ、
もはや論理矛盾というよりも
むしろ支離滅裂に見えますが、
要するに、
彼らの理解や考え方では、
天皇の意思や譲位はうまく説明できないようです。
だいいち
当時、天皇が「譲位」ではなく
「退位」と自ら称された可能性は、
その後の皇族方の御発言からしても、
まず考えられません。
むしろ、こうした
「政治家も学者もまったく予想しなかった」
「保守派もリベラルも否定的」な事態について、
なるべくスジを通して、
過去の学説や思想、
あるいは伝統をよくふまえた
考え方や論理を示していくのが、
これからの言論や学問のあり方
といえるのではないでしょうか?
ちなみに、
「衝撃」だったとかいう参与会議の2年後には、
日本史の概説書、『天皇の歴史』や『岩波講座』古代で、
譲位の問題の重要性が
すでに認識されてました
(そこでは土井が20年以上前に書いた譲位に関する論文も、
何回か引用され、
参考文献に上がっていた❗)。
それゆえ、
よく周囲を見て、じっくり考えて、
色々感じていたならば、
「まったく予想しなかった」とか
「保守派もリベラルも否定的」といったような、
奇妙な事態には
いたならなかったはず
ではないでしょうか?